自分自身のものは気づきにくいけど、他人のものは案外容易に気づくのが、口ぐせです。「あ。この人、これが口ぐせね」と気づいた瞬間から、やたらとその言葉が耳につくというのか、気になり始めることもあります。
＊「腹立つ」口ぐせ＊
いつも私の職場ネタで恐縮ですが、”口ぐせというとこの人！”と反射的に思い浮かぶくらい、アクの強い口ぐせの持ち主に出会ったのも、やはり勤めていた会社ででした。その口ぐせというのが、「腹立つわ～」というもの。とにかく何にでも「腹を立てる」のです。
例えば、時間指定していたバイク便が少し遅れたから「腹立つわ～」。会議が長引いて、ランチタイムにズレこんでしまって「腹立つぅ」。接待用に席をおさえようとレストランに電話したら、満席で予約が取れなくて「メチャクチャ腹立つ！」etc.。
とにかく息をしている如くナチュラル（？！）に、常に「腹立って」いるのです。確かにまあ、なにか不本意だったり、思い通りにいかないことに遭遇してるから怒りたくなるのでしょうが、「一日何回腹立てたら気がすむねン！」とツッコミたくなるほど、連続技のご立腹ぶり。「腹立つ」が口ぐせなので、もはやそこに深い意味など存在していないのでしょうが、そばで聞いて不愉快なことこの上ありませんでした。
そして、もうお気づきかと思いますが、『口ぐせは、口ぐせを呼ぶ』のです。「腹立つ」とばかり口に出すので、この人には更にまた腹立たしいことが起こるのですね。起こるというより、脳が「腹立つ」物事を探している、「腹立つ」ことに意識がフォーカスされている、と言ったほうがいいかもしれません。
＊口ぐせは強烈な自己暗示＊
自分が発している言葉を誰よりも近くで聞いているのは、自分です。一度や二度ならまだしも、それが何百回、何千回ともなる口ぐせは、強い自己暗示となります。脳は言葉から大きな影響を受けます。繰り返し口に出す言葉は、潜在意識に刷り込まれ、人間はその言葉通りの行動をとろうとします。口ぐせは、ほぼ無意識に言ってるぶん、意識的に口に出す言葉よりも更に暗示効果が強いとも言えます。
＊口ぐせで心も変えられる＊
どんな人も、多かれ少なかれ口ぐせはあるものです。そして、口ぐせにより自己暗示されるのならば、「面倒くさい」「忙しい」「大変」といったようなネガティブなものではなく、「簡単」「楽勝」「余裕」などといった、気持ちが軽くなるプラスのエネルギーを感じる言葉をクセにするのが得策です。同じ状況でも、「面倒くさい」「大変」と言ってしまうとますます面倒で大変に感じてきますが、「楽勝、楽勝♪」と口に出せば、本当に楽勝のような気がしてくるのが人間の心理です。
＊口ぐせに気づく。そして、理想を言葉に＊
自分がどんな口ぐせを言っているかを知るには、家族や会社の同僚など、身近な人に訊くのが一番簡単です。彼らから教えられたあなたの口癖が、もしネガティブなものであっても、その口ぐせがわかったことで、次にそれを口にしてしまった時に、自分で気づけるようになります。するとその口ぐせは、徐々に減っていくのです。
そして次には、ネガティブな言葉の代わりに、「余裕」「楽勝」「絶好調」といった、気持ちが前向きになるポジティブな内容の口癖に変えていくと良いでしょう。更には、なりたい自分や理想を言葉にして、口ぐせとなるまで意識的に口に出すと効果的です。
＊「人たらし」な男と、「金儲けが得意」な女＊
例えば、これまた私の元同僚ですが、常にセールス部門のトップにいた男性の口癖が、「僕は”人たらし”だから」というものでした。「人たらし」という言葉の意味の是非は別にして、とにかく彼は人に好かれ、取引先などの”エライさん”達にもとても可愛がられて、次々新しいクライアントを紹介してもらったりするのです。もともとそういう素養があったかどうかは関係なく、「自分は人たらし」だというポジティブな口癖が彼の自己暗示となって、難しめの相手にも臆することなくアプローチする後押しにもなり、なんだかんだでいつも上手くいっていた、という印象です。
また、「私にはお金儲けの才能がある」とよく口にしている知人は、その通りにいつもお金回りが良く、物心ともに豊かな感じです。大学を出てすぐに起業して、正直言ってよくわからないビジネスをいくつも立ち上げたり潰したりしています。でも、たとえ失敗しても次のビジネスで、必ず前の損失以上の利益を上げているそうで、「失敗しても、”私にはお金儲けの才能がある”って唱えながら、頑張るねン」と言っています。これはもう口ぐせと言うより、言葉の力を利用した意識的自己暗示ですね。
＊まとめ＊
口ぐせは、考え方のクセでもあります。口ぐせの持つ強烈な暗示効果を逆手に取り、ポジティブな言葉を口ぐせにすることで、自分により良い暗示をかけ、なりたい自分になることも不可能ではありません。使う言葉を変えれば、人生が変わります。
今日も最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
