電車でメイクする女性のことがメディアでも取り上げられて話題になってから幾年月。
今ではもう誰もそんなことを暇つぶしのネタにもしなくなり、もはやそういう女性は居なくなったかのように思っていたのですが、私が世間知らずなだけでした。
若い女性の専売特許だったはずの電車メイクは、今や熟年層にまで浸透しているのですね。
普段は車での移動が多くてあまり電車に乗ることがないのですが、休日の今日、自宅最寄り駅から乗り込んだ車内で、メイク中の女性に遭遇してしまいました。
まず驚いたのは、その女性がもうかなりいい年齢だったこと。確実に60歳前後だと思われる容貌。
私が乗り込んだ時には、ファンデーションがペッタリと塗られ、すでに眉はしっかりと描かれており、アイメイクを始めたばかりのタイミングでした。
大きな手鏡を左手に持ち、右手だけで器用にアイシャドウを塗り重ねていくテクニックはなかなかのもの。
まつ毛のキワからまぶた全体にアイシャドウをグラデーションにぼかしたら、次はアイラインに突入。
ガタガタ揺れる電車の中なのに、片手だけでリキッドアイライナーを器用に引いていきます。
それが終わると口紅。
口紅を唇に直接塗るのではなく、ちゃんと筆にとって輪郭を取るところから始める丁寧さ。
何度も塗り重ねてくっきりと、そしてツヤツヤの唇に仕上げたら次はチーク。
口紅に比べるとこれはわりかしササっと手早く、両方の頬に色を付けました。
これで完成かと思ったらまだ更に。
鼻筋とあご先に細くハイライトを刷いて、ここでやっと完成。
この間、約10分。
私が乗り込んだ時のお顔とは別人のように華やいだ状態に大変身。
同じ車内に乗り込んで私のように彼女に注目していた人以外、あのお顔が電車内メイクで作られたとは想像もしないだろう完璧な仕上がりでした。
何年も前のことになりますが電車通勤をしていた頃には、朝の車内でメイクをする女性を見かけるのが不快でしかたありませんでした。
”どこの誰とも知れない不作法な人が公共の乗り物で勝手に化粧してるだけ”なのに、なぜあんなにイライラしたのか???
化粧品の粉が飛んできたとかナントカ、実害があったわけでもないのにね。
よく考えてみると、私が不愉快になる要素なんて全然ないような。。。
心に余裕がないと、小さなことにもイラついてしまうのかもしれません。
そして当時とは全然違う今の状況で久しぶりにそういうシーンに遭遇してみると、不快どころか興味津々な心持ちというのか面白さが先に立って、熟年女性の変身ぶりを存分に観察してしまいました。
あのオバサマは、電車内メイクで綺麗に変身した顔で、いったいどこに出かけ誰に会うのか。
休日のお昼前の時間帯だったので、もしかしたらランチデートの約束でもあったのかもしれません。
デートのお相手は、彼女が電車の中でメイクしてきたなんて、夢にも思わないでしょうね(毒)。